ファクタリングの「掛け目」と手数料の年率換算|計算式と比べ方
ファクタリングの「掛け目」は、請求額のうちどれだけを先に受け取れるかを示す割合として使われる語ですが、手数料との関係や残りの金額の扱いは会社によって異なります。手数料の年率換算は「手数料 ÷ 受け取る金額 × 365 ÷ 資金を使える日数」で計算でき、同じ手数料率でも、売掛先の支払日までの日数が短いほど年率は高くなります。
本記事では、当サイトが各社の公式サイトで確認した掛け目・買取率の表示と、掛け目と手数料を分けて考える計算式、年率換算の方法と注意点をご説明します。手数料率そのものの比較はファクタリングの手数料、利息制限法との関係はファクタリングと利息制限法でご案内しています。
「掛け目」と「手数料」は別の数字です
ファクタリングの見積もりで出てくる割合には、主に次の2つがあります。
- 手数料(率):請求額などに対してファクタリング会社が受け取る対価の割合です
- 掛け目:請求額のうち、契約時に先に支払われる部分の割合を示す語として使われます
手数料は利用者の負担そのものですが、掛け目は「いつ受け取るか」に関わる数字です。掛け目で差し引かれた部分が、後日支払われるのか、手数料に含まれて戻ってこないのかによって、実際の負担は大きく変わります。
ただし、「掛け目」は法令で定義された用語ではなく、使い方は会社ごとに異なります。当サイトが確認した公式の表示でも、手数料と並べて書く会社、利用可能額の説明で使う会社、掛け目を使わないと明記する会社があります。見積もりの段階で、掛け目で差し引かれた部分の扱いを確認することが大切です。
各社の公式表示:掛け目・買取率・先払いの割合
当サイトは、掲載36社の手数料・入金スピード・利用可能額などを各社の公式サイトで確認しています。その記録(当サイトの手数料一覧と、会社ページの「編集部の検証欄」の事実欄)のうち、「掛け目」「買取率」、または請求額の一部を先に支払う割合を公式に記載している会社は、次の7社です。
| 会社 | 公式の表示 | 区分 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| PMG | よくある質問に掛け目「通常は97~92%」(2社間契約の場合は低めに設定する場合あり)。手数料ページは「買取率は…98%(売買手数料2%)」 | 掛け目・買取率 | 2026年10月31日 |
| レバンタ | 「掛け目は概ね90%~96%」(買取可能額の説明) | 掛け目 | 2026年10月31日 |
| PayToday | 「掛け目は使用せず、請求金額100%から手数料を引いた金額を入金」 | 掛け目を使わない | 2026年10月31日 |
| カイポケ早期入金 | 国保連請求額の80%を約1.5ヶ月前倒しで入金し、残りの20%は後日入金 | 先払いの割合 | 2026年10月31日 |
| ビートレーディング | トップに「最大買取率 98%」 | 買取率 | 2026年10月31日 |
| メンターキャピタル | 「買取率最大98%」の表記のみ(自社の手数料率は記載なし) | 買取率 | 2026年10月14日 |
| ベストファクター | 平均買取率91.9%(集計期間・定義の明記なし) | 買取率 | 2026年10月31日 |
表のとおり、同じ「割合」でも意味が異なります。PMGの手数料ページの「買取率98%(売買手数料2%)」は、買取率と手数料を足すと100%になる書き方で、買取率が手数料の裏返しとして使われています。一方、カイポケ早期入金の80%は、残りの20%が後日入金される先払いの割合です。PMGのよくある質問の掛け目「97~92%」が、どちらの意味で使われているかは、当サイトの確認範囲では公式の説明から判別できませんでした。
残る29社の記録には、掛け目・買取率・先払いの割合の記載がありません。記載がない会社では、請求額の全額を買い取るのか一部なのか、差し引かれた部分が後日支払われるのかを、見積書と契約書で確認してください。なお、OLTAは「請求書の全額または一部の買取が可能」と公式に記載しています(2026年10月31日確認)。これは利用者が買い取ってもらう金額を選べるという意味で、掛け目とは別の話です。
掛け目と手数料を分けた計算式
掛け目の扱いを、次の2つの型に分けると計算が整理できます。どちらの型にあたるかは、会社の見積書・契約書の定めで決まります。
型A:差し引かれた部分が後日支払われる場合
契約時に請求額の一部だけが支払われ、残りは売掛先の入金後に支払われる型です。
- 契約時に受け取る金額 = 請求額 × 掛け目 − 手数料
- 後日受け取る金額 = 請求額 ×(1 − 掛け目)
例(仮定):請求額100万円・掛け目80%・手数料3万円の場合
- 契約時に受け取る金額 = 100万円 × 80% − 3万円 = 77万円
- 後日受け取る金額 = 100万円 × 20% = 20万円
- 負担の合計は手数料の3万円です。ただし、契約時に使える資金は77万円にとどまります
手数料を請求額に対してかけるのか、先払いの金額に対してかけるのかも、会社によって異なる可能性があります。上の例では、手数料を金額(3万円)で置いています。
型B:請求額の全額から手数料だけを差し引く場合
PayTodayのように、掛け目を使わず、請求額から手数料を引いた金額を入金する型です。
- 受け取る金額 = 請求額 −(請求額 × 手数料率)
例(仮定):請求額100万円・手数料率5%の場合
- 受け取る金額 = 100万円 − 5万円 = 95万円
手数料の計算の元になる金額にも違いがあります
手数料率が同じでも、何に率をかけるかで金額は変わります。OLTAは公式ヘルプで、「手数料=買取元本×手数料率(買取元本=希望金額+手数料)」と定めています(2026年10月31日確認)。この定めでは、手数料率5%で95万円を受け取りたい場合、買取元本は100万円、手数料は5万円になります。受け取る95万円に対する手数料の割合は、5万円 ÷ 95万円 ≒ 5.26%です。
見積書を比べるときは、手数料率だけでなく、「手数料の金額」「契約時に受け取る金額」「後日受け取る金額」の3つを金額で並べると、計算の元の違いに左右されずに比べられます。
手数料の年率換算の計算式
計算式
ファクタリングの手数料は、1回の取引ごとの割合で表示されます。資金を使える期間の長さが違う見積もりを比べるために、1年あたりに引き直す計算が年率換算です。
年率換算(%)= 手数料 ÷ 受け取る金額 × 365 ÷ 資金を使える日数 × 100
- 手数料:手数料に加え、振込手数料など、その取引で負担する費用をすべて含めます。たとえばペイトナーは手数料一律10%に加えて振込手数料330円(2026年10月14日確認)、バイオンは一律10%に加えて振込手数料500円(2026年10月31日確認)を、公式に表示しています
- 受け取る金額:契約時に実際に受け取る金額です。型Aでは、後日受け取る分は含めません
- 資金を使える日数:入金を受けた日から、売掛先が支払う日(2社間ファクタリングでは、売掛先から受け取った代金をファクタリング会社へ送る日)までの日数です
計算例(仮定)
例として、請求額100万円・手数料5万円(振込手数料などの費用はなしと仮定)・受け取る金額95万円の取引を考えます。
- 売掛先の支払日まで30日の場合:5万円 ÷ 95万円 × 365 ÷ 30 × 100 ≒ 64.0%
- 売掛先の支払日まで60日の場合:5万円 ÷ 95万円 × 365 ÷ 60 × 100 ≒ 32.0%
同じ「手数料5%」でも、資金を使える日数が半分になれば、年率換算の値は2倍になります。手数料率が低い見積もりでも、支払日までの日数が短ければ、年率換算では高くなることがあります。
「受け取る金額」と「請求額」のどちらで割るか
年率換算の割る数を、受け取る金額(95万円)にするか、請求額(100万円)にするかで、値が変わります。上の30日の例を請求額で割ると、5万円 ÷ 100万円 × 365 ÷ 30 × 100 ≒ 60.8%です。
当サイトの計算例では、実際に使える資金に対する負担を見るため、受け取る金額で割っています。複数の見積もりを比べるときは、どちらで割るかを揃えてください。なお、この計算は見積もりを比べるための便宜的な計算で、法令が定める利率の計算方法をそのまま当てはめたものではありません。
年率換算の値をどう読むか
貸付けの金利と同じ物差しで読まないこと
利息制限法第1条は、「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」について、元本の額に応じて年2割・年1割8分・年1割5分を超える部分を無効としています。出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)第5条第2項は、業として金銭の貸付けを行う者が年20%を超える割合による利息の契約をしたときの罰則を定めています。いずれも、金銭の貸付け(消費貸借)についての定めです。
金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で、ファクタリングを「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています。売買である取引の手数料を年率に引き直した値は、貸付けの金利と同じ計算の物差しではありますが、それだけで利息制限法や出資法の上限と比べて適法・違法を判断できるものではありません。年率換算の値は、あくまで見積もり同士を比べるための目安としてお使いください。
貸付けにあたるかは、実態で判断されます
一方で、ファクタリングの形をとっていても、取引が貸付けにあたるとされる場合があります。金融庁は同じページで、「経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります」とし、例として、売主が集金できなかった場合に「売主が債権を買い戻すこととされている」「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」ものを挙げています。また、「ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額である」ケースは偽装ファクタリングの疑いがあるとしています。
貸付けにあたる取引では、手数料という名目で受け取る金銭も利息とみなされます(利息制限法第3条、出資法第5条の4第4項)。また、貸金業法第42条第1項は、貸金業を営む者が業として行う金銭消費貸借の契約で年109.5%を超える利息の契約をしたときは、その契約を無効としています。
金融庁が紹介している裁判例
金融庁の注意喚起のページは、ファクタリングとして行われた取引について、貸金業法が適用されないなどと判断された裁判例と、貸金業に該当するなどと判断された裁判例を紹介しています。このうち、手数料(債権額面と売買代金の差額)の大きさに触れているのは、次の2件の紹介です。
- 東京地裁令和2年9月18日判決:金融庁は、不払いリスクが業者に移転していると評価できることなどに加え、手数料についても「担保目的であることを推認させるような大幅なものということもできないこと」などを総合考慮し、貸金業法は適用されないと判断された事案と紹介しています
- 東京高裁令和4年6月15日判決:金融庁は、債務者の無資力の危険の負担が業者に移転したと認められることに加え、手数料についても「実質的に担保目的のものであることを推認させるような多額のものではないこと」などを総合考慮し、債権の確定的な売買であると判断された事案と紹介しています
貸金業に該当するなどと判断された事案として紹介されているものには、たとえば大阪地裁平成29年3月3日判決があります。金融庁の紹介は、業者が不払いリスクをほとんど負っていない、債権の額面とは無関係に金員の授受がされていたといった事情等を考慮して、金銭消費貸借契約に準じるものと判断された事案というもので、手数料の大きさには触れていません。
いずれも個別の事案についての判断の紹介です。手数料に触れている2件でも、手数料は不払いリスクを誰が負うかなどと並ぶ考慮要素の1つとして挙げられており、年率換算の値が一定の水準を超えれば貸付けになる、という基準を示したものではありません。償還請求権の考え方はノンリコースとは、貸金業との関係はファクタリングと貸金業法でご案内しています。
見積もりを比べるときの手順
- 金額で書いてもらう:手数料率だけでなく、手数料の金額・契約時に受け取る金額・後日受け取る金額(ある場合)を、見積書に金額で書いてもらいます
- 掛け目の扱いを確認する:掛け目で差し引かれた部分が後日支払われるのか、どの時点で、どの条件で支払われるのかを確認します
- 手数料以外の費用を足す:振込手数料・登記費用・月額費用など、その取引で負担する費用をすべて手数料に足します。カイポケ早期入金のように、初回手数料5,000円・月額費用2,000円を別に公式に表示している会社もあります(2026年10月31日確認)
- 日数を揃えて年率換算する:受け取る日から売掛先の支払日までの日数で、上の計算式に当てはめます
- 契約書で償還請求権の有無を確認する:売掛先が支払わなかった場合に、利用者が支払う義務を負う定めがないかを確認します
手数料の交渉の進め方はファクタリング手数料の交渉、各社の手数料の公式表示は手数料・入金スピードの一覧でご確認いただけます。
よくある質問
Q: 掛け目が高いほど、手数料は安いのですか? A: そうとは限りません。掛け目は契約時に先に支払われる割合を示す語として使われ、差し引かれた部分が後日支払われるのであれば、手数料とは別の数字です。一方、PMGの手数料ページのように「買取率98%(売買手数料2%)」と、買取率を手数料の裏返しとして書く会社もあります。見積書で、手数料の金額と後日受け取る金額を確認してください。
Q: 手数料の年率換算はどう計算しますか? A: 「手数料 ÷ 受け取る金額 × 365 ÷ 資金を使える日数 × 100」で計算します。例として、手数料5万円・受け取る金額95万円・売掛先の支払日まで30日の場合(仮定)、約64.0%です。同じ条件で日数が60日なら約32.0%で、日数によって大きく変わります。
Q: 年率換算で20%を超えるファクタリングは違法ですか? A: 年率換算の値だけで違法かどうかは決まりません。利息制限法や出資法の上限は、金銭の貸付けについての定めです。金融庁は、ファクタリングを法的には債権の売買としたうえで、経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引は貸金業に該当するおそれがあるとし、その判断は契約書の形式だけでなく実態に照らして行われるとしています。心配な点がある場合は、金融庁が案内しているとおり、弁護士などの専門家に相談してください。
Q: 掛け目を使わない会社はありますか? A: 当サイトの記録では、PayTodayが「掛け目は使用せず、請求金額100%から手数料を引いた金額を入金」と公式に記載しています(2026年10月31日確認)。ほかの会社の多くは、掛け目の有無を公式に書いていないため、見積もりの段階で確認してください。
まとめ
- 掛け目は、請求額のうち先に支払われる割合を示す語として使われますが、法令上の定義はなく、使い方は会社によって異なります。当サイト掲載36社のうち、掛け目・買取率・先払いの割合を公式に記載しているのは7社です
- 差し引かれた部分が後日支払われるのか、手数料として戻らないのかで、負担は大きく変わります。見積書では、手数料・契約時に受け取る金額・後日受け取る金額を金額で確認してください
- 手数料の年率換算は「手数料 ÷ 受け取る金額 × 365 ÷ 資金を使える日数 × 100」で計算でき、同じ手数料率でも、日数が短いほど高くなります
- 年率換算の値は見積もり同士を比べるための目安で、それだけで適法・違法が決まるものではありません。貸付けにあたるかは、不払いリスクの負担などの実態で判断されると金融庁は説明しています
