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ファクタリングと取引信用保険の違い|売掛先の倒産に備える2つの方法

ファクタリングと取引信用保険の違い|売掛先の倒産に備える2つの方法

更新日: 2026年11月5日取引信用保険 ファクタリング, 取引信用保険 違い, 売掛金 倒産 備え

ファクタリングと取引信用保険は、どちらも売掛先が代金を払えなくなるリスクに関わりますが、目的が異なります。ファクタリングは売掛金を売却して支払期日より前に資金を受け取る取引で、償還請求権のない契約であれば売掛先の倒産のリスクも買い手に移ります。取引信用保険は、売掛金を手元に持ったまま、売掛先が払えなくなったときの損害の一定割合を保険金で補う契約で、平時に資金が早く入るものではありません。

本記事では、取引信用保険の仕組みを保険会社の公式ページの説明で、ファクタリングの償還請求権の扱いを当サイトが各社の公式サイト・利用規約で確認した記録で整理し、2つの違いと使い分けの考え方をご説明します。償還請求権そのものの説明はノンリコースとリコースの違い、ファクタリング後に売掛先が倒産した場合の流れは売掛先が倒産した場合のリスクと対処法でご案内しています。

2つの仕組みの違い

ファクタリング:売掛金を売って、先に資金を受け取る取引

ファクタリングは、売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた代金を受け取る取引です。民法第466条第1項は「債権は、譲り渡すことができる」と定めており、ファクタリングはこの債権の譲渡の仕組みを使っています。

売掛先が倒産した場合の扱いは、償還請求権の有無で変わります。償還請求権がない(ノンリコースの)契約では、売掛先の倒産などで回収できなくても、ファクタリング会社は利用者に代金の返還を求めません。

取引信用保険:売掛金は手元に残し、回収できなかった損害を補う保険

保険法第2条第6号は、損害保険契約を「保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するもの」と定めています。取引信用保険は、この損害保険の一つとして保険会社が提供している商品です。

保険会社の公式ページでは、次のように説明されています。

  • 東京海上日動火災保険:「信用保険は、債務者が債務を履行しない場合に、債権者(ご契約者・被保険者)が被る損害を補償する保険」。国内取引信用保険は「国内に所在するお取引先が商品の販売やサービスの提供にかかわる代金支払債務を履行しないことで、お客様(被保険者)が損害を被った場合に、その損害の一定割合を保険金としてお支払いする保険」で、「原則として継続的なお取引先を対象」とする
  • アリアンツ・トレード:取引信用保険は「不払いリスク(債務不履行)から生じる損害の補償」で、「破産・倒産状態」「支払遅延(債務不履行待機期間終了後、事故認定するケース)」「ポリティカルリスク(お取引先が属する国の政府による輸出入制限、契約不履行等)」が含まれる
  • コファスジャパン信用保険会社:「お取引先の債務不履行(倒産または支払遅延)により被る貸倒れ損失に対し、保険金をお支払いします」

名前の似た「保証保険」とは、契約する人が異なります。東京海上日動は、信用保険は「債権者がご契約者および被保険者(補償を受けることができる方)となる」のに対して、保証保険は「債務者がご契約者、債権者が被保険者となる、いわゆる『他人のための契約』である点が異なります」と説明しています。売掛金の回収に備えて自社で加入するのは、債権者として契約する信用保険のほうです。

保険では、売掛金は自社のものとして残り、売掛先からの回収も自社で行います。保険金が支払われるのは、売掛先の倒産や、所定の期間を過ぎても支払いがないなど、保険契約で定めた事故が起きたときです。

違いの一覧

比べる点 ファクタリング 取引信用保険
契約の性質 売掛金の売買(債権の譲渡) 損害保険(保険法第2条第6号の損害保険契約)
資金が入る時期 契約後、売掛金の支払期日より前 保険事故が起きた後、保険金として
売掛金の持ち主 ファクタリング会社に移る 自社のまま
対象の範囲 申し込んだ請求書(売掛金)ごと 東京海上日動は「原則として継続的なお取引先」、とりしんぷるは「全お取引先」を包括的に補償(一部対象外あり)
補われる割合 ノンリコースの契約なら、売掛先が払わなくても受け取った代金の返還を求められない(違約時を除く) 損害の「一定割合」(東京海上日動)。コファスのトレードライナーは「最大90%まで」
費用のかかり方 利用のたびに買取金額に応じた手数料 保険料(コファスは保険対象売上高に対する割合で計算。とりしんぷるは業種と売上高で算出)
売掛先の審査 申込ごとに売掛先の信用を審査 保険会社が取引先ごとの限度額を設定(アリアンツ・トレード・コファス)

出典:東京海上日動火災保険「国内取引信用保険」「取引信用保険シンプルプラン(とりしんぷる)」「信用保険、保証・保証保険とは」、アリアンツ・トレード「取引信用保険とは」、コファスジャパン「Tradeliner トレードライナー」、保険法・民法(e-Gov 法令検索)。各ページは2026年11月1日に確認しました。

取引信用保険について、公式ページで確認できること

保険金の額には上限と割合があります

東京海上日動は、国内取引信用保険の保険金を「その損害の一定割合」と説明しています。コファスジャパンは、トレードライナーについて「被保険債務を回収できなかった場合、被った損失を最大90%まで補償します」と記載しています。いずれも、売掛金の全額が補われる仕組みとしては説明されていません。

アリアンツ・トレードは、「当社が設定する限度額が、万が一お取引先がデフォルトした場合に保険金をお支払する水準です」と説明しています。コファスジャパンも、保険対象の取引先ごとに希望与信額を申請し、信用調査の結果にもとづいて「お取引先ごとにクレジットリミット(与信限度額)を設定」するとしています。取引先ごとの限度額を超える売掛金は、保険金の計算の対象にならない点に注意が必要です。

支払遅延が対象になる条件は契約によります

アリアンツ・トレードは、支払遅延を「債務不履行待機期間終了後、事故認定するケース」として補償に含めています。東京海上日動のとりしんぷるは、「『法的倒産のみ』プランと『法的倒産および債務不履行』プラン」から選ぶ商品で、「補償対象となる事故はプランにより異なります」と記載しています。支払いが遅れた時点ですぐに保険金が出るとは限らないため、待機期間や事故の認定の条件は契約前に確認してください。

保険料の決まり方

保険料の具体的な料率を示していたのは、コファスジャパンの取引信用保険のページの「年率約0.1~0.2%程度(一例)」だけで、何に対する率かは同じページに書かれていません。ほかの2社の確認したページには、料率の記載はありませんでした。決まり方として公式に書かれているのは次のとおりです。

  • コファスジャパン(トレードライナー):「保険料率は、お客様の保険対象売上高に対する割合で計算され、対象となる事業分野、お客様の取引先の地域、必要な補償の種類、選択したオプションなどの要素に基づいて決まります」
  • 東京海上日動(とりしんぷる):「業種と売上高のみで保険料を算出」。対象は「最近の会計年度の年間売上高100億円以下」の「製造業・卸売業・運送業・建設業」で、保険の対象は「売買契約・請負契約に基づく代金債権」
  • アリアンツ・トレード(中小企業向けのSimplicity):「固定料金制」と記載(金額の記載はなし)

東京海上日動は、保険料について「貸倒損失は毎期一定額が発生するものではありませんが、毎期の保険料としてご負担いただくことで、コストの平準化が可能」と説明しています。

ファクタリングの償還請求権:当サイトの記録で確認できること

当サイトは、掲載している47社の公式サイト・利用規約から、償還請求権に関する記載を確認日とともに記録しています。項目名に「償還」を含む記録がある会社は25社で、そのうち24社が、売掛先の倒産などで回収できなくても利用者に代金の返還や買戻しを求めない旨を公式に記載しています。

公式の記載 社数 会社
償還請求権なし(ノンリコース)、または売掛先の倒産で返還・支払いを求めないと記載 24 ペイトナー・メンターキャピタル・株式会社No.1・エーストラスト・バイオン・アウル経済・インボイスPay・うりかけ堂・買速・OLTA・ビートレーディング・ベストファクター・FREENANCE・JTC・マネーフォワード 早期入金・みんなのファクタリング・PayToday・PMG・GoodPlus・ネクストワン・CoolPay・西日本ファクター・事業資金エージェント・ファクターズ(運営会社サイトの記載)
償還請求権の有無は明記なし 1 GMO BtoB早払い(「代金回収はGMOペイメントゲートウェイが行うため、未回収は軽減されます」との記載)

確認日:2026年10月14日(ペイトナー・メンターキャピタル・株式会社No.1・エーストラスト)、2026年11月1日(GoodPlus・ネクストワン・CoolPay・西日本ファクター・事業資金エージェント)、2026年11月3日(ファクターズ)、2026年10月31日(そのほかの15社)。

ノンリコースであっても、例外がある会社があります。FREENANCEは表明保証違反や取引先からの直接受領の場合に額面相当額の支払義務を、マネーフォワード 早期入金は表明保証違反・取引の取消などの場合に譲渡対価の返還請求と違約金を、みんなのファクタリングは表明保証違反などで解除となった場合に買取代金の返還と違約金を、それぞれ利用規約に定めています(2026年10月31日確認)。GoodPlusも、表明保証や遵守事項に違反した場合の額面金額相当額の支払義務を利用規約に定めています(2026年11月1日確認)。売掛先の倒産のリスクを移せるのは、契約の条件を守っている場合に限られます。

残る22社は、当サイトの記録に償還請求権の項目がありません。申込時に、契約書で償還請求権の有無を確認してください。

使い分けの考え方

目的が「今の資金」か「将来の損失への備え」か

ファクタリングは、売掛金を早く現金にしたいときの手段です。ノンリコースの契約であれば、売った売掛金については売掛先の倒産のリスクも移りますが、その分を含めた手数料を毎回負担します。対象は売った請求書だけで、ほかの売掛金のリスクは残ります。

取引信用保険は、資金繰りを早める手段ではありません。継続的に取引する売掛先が払えなくなったときに、損害の一定割合を保険金で受け取るための備えです。東京海上日動が「原則として継続的なお取引先を対象」とし、とりしんぷるが「全お取引先を個別審査なく、包括的に補償」するとしているように、個々の請求書ではなく取引先との継続的な取引を単位に考える商品です。

計算例(仮定)

例として、売掛先A社に100万円の売掛金がある会社を考えます(金額と手数料率は説明のための仮定です)。

  • ファクタリング(ノンリコース・手数料率を仮に5%とした場合):契約後に95万円を受け取ります。その後A社が倒産しても、契約の条件を守っていれば95万円を返す必要はありません。手数料5万円は、A社が倒産しなくても負担します
  • 取引信用保険(コファスの「最大90%」を当てはめた場合):平時に入る資金は増えません。A社が倒産して100万円が回収できなくなった場合、保険契約の条件を満たし、A社の限度額の範囲内であれば、最大で90万円の保険金を受け取ります。保険料は、A社が倒産しなくても負担します

実際の手数料率は会社ごとに異なり、手数料・入金スピードの一覧に各社の公式表示を掲載しています。保険金の割合・限度額・保険料は契約ごとに決まるため、保険会社や代理店の提示する条件で確認してください。

両方を組み合わせる例もあります

保険会社が、取引信用保険の契約者向けにファクタリングを組み合わせたサービスを発表した例があります。損害保険ジャパン日本興亜(当時)は2018年9月6日に、GMOペイメントゲートウェイと提携した取引信用保険の「早期資金化サービス」の提供開始を発表しました。あいおいニッセイ同和損害保険は2020年9月15日に、OLTAと提携し、取引信用保険の契約者向けに「クラウドファクタリング」の提供を始めると発表しています。いずれも発表時点の内容で、現在の提供状況と条件は当サイトでは確認していません。

検討するときの確認事項

  1. 何に備えるのかを決める:今月の支払いに充てる資金が必要なのか、主要な取引先が倒産したときの損失に備えたいのかで、選ぶ手段が変わります
  2. ファクタリングは償還請求権と例外条項を確認する:ノンリコースと書かれていても、表明保証違反などの場合に返還を求める定めがある会社があります。契約書の条項の読み方はファクタリング契約書の注意点でご案内しています
  3. 取引信用保険は対象の取引先・限度額・待機期間を確認する:取引先ごとの限度額、支払遅延が事故と認められるまでの期間、対象外となる取引先は、契約ごとに決まります
  4. 保険の対象になる債権の種類を確認する:とりしんぷるは「売買契約・請負契約に基づく代金債権」を対象としています。自社の売掛金がどの契約にもとづくものかを確認してください
  5. ほかの手段とも比べる:売掛金や在庫を担保にした融資との違いはファクタリングとABLの違いでご案内しています

よくある質問

Q: ファクタリングと取引信用保険の一番大きな違いは何ですか? A: 資金が入る時期です。ファクタリングは売掛金を売って、支払期日より前に資金を受け取ります。取引信用保険は売掛金を自社に残したまま、売掛先の倒産などの保険事故が起きたときに、損害の一定割合を保険金として受け取る仕組みです。

Q: 取引信用保険では、売掛金の全額が補償されますか? A: 確認した保険会社の公式ページでは、全額を補償する仕組みとしては説明されていません。東京海上日動は「損害の一定割合」、コファスジャパンは「最大90%まで」と記載しています。取引先ごとの限度額も設定されるため、限度額を超える部分は補われません。

Q: ノンリコースのファクタリングなら、売掛先が倒産しても返金は不要ですか? A: 当サイトの記録では、償還請求権の記載がある24社のうち23社が、売掛先の倒産などで回収できなくても返還を求めない旨を公式に記載しています。ただし、表明保証違反や取引先からの直接受領などの場合に返還や違約金を定める会社もあるため、契約書の例外の条項を確認してください。

Q: 取引信用保険の保険料はどのくらいですか? A: 具体的な料率を示していたのは、コファスジャパンの取引信用保険のページの「年率約0.1~0.2%程度(一例)」だけでした(何に対する率かは同じページに記載がありません)。コファスジャパンは保険対象売上高に対する割合で計算すると説明し、東京海上日動のとりしんぷるは業種と売上高で保険料を算出するとしています。金額は保険会社や代理店の見積もりで確認してください。

まとめ

  • ファクタリングは売掛金を売って先に資金を受け取る取引、取引信用保険は売掛先が払えなくなったときの損害を保険金で補う損害保険です
  • 取引信用保険の保険金は損害の「一定割合」(東京海上日動)で、コファスのトレードライナーは「最大90%まで」です。取引先ごとの限度額も設定されます
  • 保険料の料率を示していたのはコファスジャパンの「年率約0.1~0.2%程度(一例)」だけです。コファスジャパンは保険対象売上高に対する割合、東京海上日動のとりしんぷるは業種と売上高で算出すると説明しています
  • ファクタリングでは、当サイトの記録で償還請求権の記載がある24社のうち23社が、売掛先の倒産で返還を求めない旨を公式に記載しています。表明保証違反などの例外の条項は契約書で確認してください
  • 今の資金が必要ならファクタリング、継続的な取引先の倒産に備えるなら取引信用保険と、目的に合わせて検討してください

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