ファクタリング利用中に自己破産・倒産したら?売掛金と契約の扱い
ファクタリングを利用している最中に利用者自身が破産した場合、売った売掛金や、売掛先から受け取ってまだ送金していない代金の扱いは、破産手続の中で整理されます。破産手続開始の決定があると、破産財団に属する財産の管理と処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に移ります(破産法第78条第1項)。そのため、利用者が自分の判断でファクタリング会社や他の債権者に支払いを続けることはできなくなります。
ファクタリング会社との関係で結果を左右するのは、契約の形(2社間か3社間か)、債権譲渡の対抗要件を備えていたか、償還請求権・代表者保証・譲渡担保の定めがあるかです。本記事では、破産法・民法などの条文で言えることと、当サイトが各社の公式サイト・利用規約で確認した定めを分けて掲載しています。個別の事案にどう当てはまるかは、弁護士にご相談ください。
なお、売掛先(取引先)が倒産した場合の流れはファクタリング後に売掛先が倒産した場合、資金繰りの悪化を防ぐための使い方はファクタリングによる倒産の防止でご案内しています。本記事は、利用者の側が破産・倒産する場合に絞っています。
「倒産」と「破産」:破産法の定義
「倒産」は法律上の用語ではなく、一般には事業を続けられなくなった状態を広く指します。法的な手続としては破産のほか民事再生などがありますが、本記事では破産法の定めに絞ってご説明します。
破産法は、破産手続を「債務者の財産…を清算する手続」と定義しています(第2条第1項)。手続が始まる原因は、次のとおりです。
- 支払不能:「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(第2条第11項・第15条第1項)。支払を停止したときは、支払不能と推定されます(第15条第2項)
- 債務超過(法人の場合):「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」。法人については、支払不能に加えて債務超過も手続開始の原因になります(第16条第1項)
「自己破産」は、債務者自身が申し立てる場合を指す一般的な呼び方です。個人事業主が自己破産する場合と、法人が破産する場合とでは、手続の後の扱いが異なります。個人の場合は、破産手続とは別に免責(債務の支払義務を免れること)の許可が問題になります(第252条・第253条)。
破産手続が始まると変わること
破産手続開始の決定は、決定の時から効力を生じます(第30条第2項)。その後の主な変化は次のとおりです。
- 財産の管理は破産管財人へ:破産者が手続開始の時に持っている一切の財産は破産財団となり(第34条第1項)、その管理と処分をする権利は破産管財人に専属します(第78条第1項)
- 債権者は個別に取り立てられない:手続開始前の原因に基づく請求権(破産債権。第2条第5項)は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できません(第100条第1項)
- 破産者の財産でないものは取り戻せる:破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(取戻権)に影響を及ぼしません(第62条)
- お互いに履行が終わっていない契約:双務契約で、破産者と相手方の双方が手続開始の時にまだ履行を終えていない場合、破産管財人は契約の解除か履行の請求を選ぶことができます(第53条第1項)
ファクタリング会社の請求が、このうちどれとして扱われるか(取戻権の対象か、破産債権か)は、契約の内容と事実関係によって変わります。条文から一律に決まるものではないため、当サイトでは断定しません。
ファクタリングで売った売掛金の扱い
ファクタリングは債権の売買です
金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」とし、「法的には債権の売買(債権譲渡)契約です」と説明しています。契約が成立すると、売った売掛金は契約上、ファクタリング会社のものになります。
第三者に主張するには対抗要件が必要です
債権を譲り受けたことを売掛先や第三者に主張するには、対抗要件が必要です。
- 民法第467条第1項:債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、「債務者その他の第三者に対抗することができない」
- 民法第467条第2項:その通知または承諾は、確定日付のある証書でしなければ、「債務者以外の第三者に対抗することができない」
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項:法人が債権を譲渡し、債権譲渡登記ファイルに登記がされたときは、債務者以外の第三者については、確定日付のある証書による通知があったものとみなされます
3社間ファクタリングでは、売掛先に譲渡を通知するか承諾を得るのが通常の流れです。2社間ファクタリングでは、売掛先に知らせないため、債権譲渡登記をするか留保するかが契約ごとに異なります。利用者が破産したときに、対抗要件を備えていたかどうかが問題になり得るのはこのためです。
| 項目 | 3社間ファクタリング | 2社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 売掛先への通知・承諾 | 通常あり | 通常なし |
| 売掛先の支払先 | ファクタリング会社 | 利用者(受け取った後にファクタリング会社へ送金) |
| 利用者の破産時に確認すること | 売掛先への通知・承諾が確定日付のある証書でされているか | 債権譲渡登記の有無、受け取った代金を送金済みか |
2社間で、受け取った代金を送る前に破産した場合
2社間ファクタリングでは、売掛先は譲渡を知らないまま利用者に代金を支払い、利用者がその代金をファクタリング会社へ送ります。この送金の前に利用者が破産すると、次の点が問題になります。
- 受け取った代金は、利用者の口座で他の資金と混ざっていることが多く、どの部分が送金すべき代金か区別しにくくなります
- 破産手続開始の後は、口座の預金を含む財産の管理と処分の権利が破産管財人にあるため(第78条第1項)、利用者が自分の判断でファクタリング会社へ送金することはできません
- ファクタリング会社が、送金されなかった代金について取戻権を主張できるのか、破産債権として手続に参加することになるのかは、上で述べたとおり契約の内容と事実関係によって変わります
例として、売掛金300万円を2社間ファクタリングで売り、手数料を差し引いた代金を受け取った後、支払期日に売掛先から300万円が利用者の口座に振り込まれたとします(金額は説明のための仮定です)。利用者は契約上、この300万円をファクタリング会社へ送る義務を負っています。送る前に破産手続が始まると、この300万円の扱いは利用者の判断を離れ、破産管財人とファクタリング会社の間で整理されることになります。
送金が遅れたときの遅延損害金や売掛先への通知の定めは、ファクタリングの支払いが遅れたらで、各社の利用規約の例とともにご案内しています。受け取った代金を自社の別の支払いに回すことの法的な扱いは、ファクタリングでやってはいけないことにまとめています。
償還請求権の有無と、利用者側の事情による例外
売掛先の不払いを利用者に求めない会社
当サイトの確認欄(各社の公式サイト・利用規約で確認した事実)で、償還請求権の項目がある会社は、掲載36社のうち19社です。そのうち18社が、売掛先の倒産や不払いを理由に、利用者へ返還・買戻し・支払いを求めない旨を公式に記載しています(ペイトナー・メンターキャピタル・株式会社No.1・エーストラストは2026年10月14日確認、ほかの14社は2026年10月31日確認)。GMO BtoB早払いは、償還請求権の有無を明記していません(2026年10月31日確認)。
これは売掛先の信用状態による不払いについての定めで、利用者自身が破産した場合の扱いを直接定めたものではありません。償還請求権の仕組みはノンリコースとリコースの違いでご説明しています。
ノンリコースでも、利用者側の事情では別の定めがあります
ノンリコースと記載する会社でも、利用者側の事情による場合は別の扱いを定めている例があります(いずれも公式サイト・利用規約・2026年10月31日確認)。
- バイオン:利用者の責めに帰すべき事由がある場合を除き、償還を求めない(利用規約)
- マネーフォワード 早期入金:表明保証違反・取引の取消等の場合は、譲渡の合意解除・譲渡対価の返還請求と違約金(利用規約第13条)
- みんなのファクタリング:表明保証違反等で解除となった場合は、買取代金の返還と額面との差額の違約金
- FREENANCE:表明保証違反・取引先からの直接受領等の場合は、額面相当額の支払義務
- PMG:請求書・注文書の偽造等が見られる場合は措置あり(措置の内容は当サイトの確認データに記載なし)
利用者が破産した場合にこれらの定めがどう働くかは、契約書の条項と破産手続での扱いによります。利用中の会社の利用規約で、解除・返還・違約金の条項を確認してください。
代表者保証・譲渡担保の定めがある会社
法人が破産しても、代表者が個人として保証している場合は、保証した代表者に請求が及ぶ可能性があります。個人の破産で免責が許可された場合でも、破産法第253条第2項は、免責許可の決定は「破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利…に影響を及ぼさない」と定めています。
当サイトの確認欄で、保証人・代表者保証・担保について記載がある会社は次の6社です(抜き出しの基準:確認欄の事実に「保証人」「代表者保証」「連帯保証」「保証書」「担保」の語がある会社。表明保証は除く)。並びは当サイトの手数料一覧の掲載順です。
| 会社 | 公式・利用規約の記載 | 確認日 |
|---|---|---|
| みんなのファクタリング | 利用規約は、利用者が法人の場合、代表者が所定の保証書を差し入れていることを買取実行の条件とし(第10条)、買取と同時に「買取日以降1年間の間に発生する一切の債権」を担保対象債権として譲渡担保権を設定する(第13条)と定めている | 2026年10月31日 |
| セーフトラスト | 保証人・担保は不要(公式よくある質問) | 2026年10月14日 |
| ファクタープラン | 担保・代表者保証は不要(公式トップ) | 2026年10月14日 |
| バイオン | 公式トップは「担保・保証人 不要」と表示。利用規約は、利用者が法人の場合は代表者が連帯保証人として個人の立場で保証すること(第8条11項)と、契約日から2年間に取得する営業上の金銭債権を譲渡担保として差し入れること(第9条。売掛先の信用リスクを理由とした実行はしない)を定めている | 2026年10月31日 |
| アウル経済 | 連帯保証人は不要(公式LP) | 2026年10月31日 |
| カイポケ早期入金 | 担保・保証人は不要(公式トップ) | 2026年10月31日 |
バイオンのように、公式トップの表示と利用規約の定めが異なって見える会社もあります。破産を検討する段階では、公式サイトの表示だけでなく、締結した契約書と利用規約の保証・担保の条項を確認してください。譲渡担保が破産手続でどう扱われるかは、破産法の条文に直接の定めがなく、当サイトでは扱いを断定しません。
破産の申立ての前後に気をつけること
資金繰りが行き詰まった段階での取引は、後の破産手続で問題になることがあります。破産法には次のような定めがあります。
- 否認:破産者が破産債権者を害することを知ってした行為などは、破産手続開始後に破産財団のために否認されることがあります(第160条第1項)。相当の対価を得て財産を処分した場合でも、隠匿等の処分のおそれを生じさせ、その意思があり、相手方がそれを知っていたときは否認の対象になります(第161条第1項)。支払不能になった後の特定の債権者への弁済なども対象になり得ます(第162条第1項)
- 免責不許可事由(個人の場合):第252条第1項は、免責を許可しない事由として、「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」(第2号)や、帳簿・書類の隠滅や偽造(第6号)などを挙げています。ただし、これらに当たる場合でも、裁判所は一切の事情を考慮して免責を許可することができます(同条第2項)
ファクタリングの利用そのものがこれらに当たるかどうかは、条文だけでは決まらず、時期・条件・代金の使い道などの事実関係によって裁判所が判断します。破産を考え始めた段階で新たにファクタリングを利用するかどうか、受け取った代金をどう扱うかは、利用する前に弁護士に相談してください。
2社間ファクタリングで売掛先から受け取った代金は、契約上ファクタリング会社へ送る義務があるものです。ほかの債権者への返済に充てる前に、契約書の送金の定めを確認し、弁護士に相談してください。
相談先
破産を含む債務の整理は、弁護士への相談が出発点になります。公的な窓口として、次のものがあります(いずれも各機関の公式ページで2026年11月1日に確認)。
- 法テラス・サポートダイヤル:0570-078374、平日9時から21時・土曜9時から17時。「法的トラブルでお困りの方」向けの問い合わせ窓口です
- 弁護士会の法律相談センター:日本弁護士連合会の「全国の弁護士会の法律相談センター」から、各都道府県の窓口を確認できます。最新の情報は近くの弁護士会に問い合わせるよう案内されています
- ひまわりほっとダイヤル:日本弁護士連合会の中小企業向け弁護士予約サービスで、0570-001-240、月曜日〜金曜日(祝日を除く)10時〜12時・13時〜16時です
相談の際は、ファクタリングの契約書・利用規約、債権譲渡通知や登記の書類、売掛先からの入金の記録、ファクタリング会社への送金の記録をそろえておくと、状況を正確に伝えられます。
よくある質問
Q: ファクタリングを利用中に自己破産すると、売った売掛金はどうなりますか? A: ファクタリングは法的には債権の売買で(金融庁)、売った売掛金は契約上ファクタリング会社のものになります。ただし、第三者に譲渡を主張するには民法第467条などの対抗要件が必要で、破産手続の中での扱いは、対抗要件の有無や契約の内容、事実関係によって変わります。個別の扱いは弁護士にご確認ください。
Q: 2社間ファクタリングで、売掛先から受け取った代金を送る前に破産したらどうなりますか? A: 破産手続開始の決定があると、財産の管理と処分の権利は破産管財人に専属するため(破産法第78条第1項)、利用者が自分の判断で送金することはできなくなります。ファクタリング会社の請求が取戻権の対象か破産債権かは、契約の内容と事実関係によって変わります。
Q: ノンリコース契約なら、破産しても請求されませんか? A: ノンリコースの定めは、売掛先の倒産や不払いを理由に利用者へ返還を求めないというもので、利用者自身の破産を直接定めたものではありません。表明保証違反などの場合に返還や違約金を定める会社や、代表者保証・譲渡担保を利用規約で定める会社(バイオン・みんなのファクタリング)もあります。
Q: 法人が破産した場合、代表者個人に請求が来ることはありますか? A: 代表者が個人として保証している場合は、保証した代表者に請求が及ぶ可能性があります。当サイトの確認では、バイオンとみんなのファクタリングが、利用者が法人の場合の代表者の保証を利用規約で定めています(2026年10月31日確認)。
まとめ
- 破産手続開始の決定があると、破産財団に属する財産の管理と処分の権利は破産管財人に専属し(破産法第78条第1項)、破産債権は破産手続によらなければ行使できません(第100条第1項)
- ファクタリングは法的には債権の売買です。第三者に主張するには民法第467条や動産債権譲渡特例法第4条の対抗要件が必要で、2社間か3社間かで確認すべき点が異なります
- 当サイト掲載36社のうち、償還請求権の項目がある19社中18社が、売掛先の不払いを利用者に求めない旨を公式に記載しています。これは利用者自身の破産についての定めではありません
- 代表者保証・譲渡担保を利用規約で定める会社(バイオン・みんなのファクタリング)があります。個人の免責は保証人への権利に影響しません(第253条第2項)
- 破産を考え始めた段階での新たな利用や、受け取った代金の扱いは、否認・免責に関わる可能性があるため、事前に弁護士へご相談ください
