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ファクタリングで差押えは起きる?売掛金・口座差押えの条件と回避策

ファクタリングで差押えは起きる?売掛金・口座差押えの条件と回避策

更新日: 2026年10月31日ファクタリング 差し押さえ, ファクタリング 差押え 売掛金, 税金滞納 差押え 売掛金

ファクタリングを使っていても、税金や社会保険料の滞納、取引先などへの支払いの遅れがあれば、売掛金や入金先の口座が差し押さえられることがあります。売掛金をファクタリング会社に売った後であっても、譲渡の対抗要件(確定日付のある通知・承諾、または債権譲渡登記)を差押えより先に備えていなければ、ファクタリング会社は差押えをした側に優先を主張できません。本記事では、差押えが起きる3つの場面、売った売掛金と差押えの優劣を決める条文、口座の差押え、差押えを避けるために売手ができる手続を、条文と官公庁の案内にもとづいてご説明します。

税金を滞納している場合にファクタリングを申し込めるかどうかは税金滞納でもファクタリングは利用できるか、債権譲渡登記の費用や手続はファクタリングの債権譲渡登記で扱っています。

差押えが起きる3つの場面

ファクタリングの利用者(売手)に関係する差押えは、差押えをする者によって3つに分かれます。根拠となる手続が異なるため、まずどの場面に当たるかを確認してください。

場面 差押えをする者 主な根拠 差押えの効力が生じる時点
税金の滞納 税務署・国税局 国税徴収法47条・62条 債権差押通知書が第三債務者(売掛先・銀行)に送達された時
厚生年金保険料などの滞納 厚生労働大臣(相談の窓口は年金事務所) 厚生年金保険法86条・89条(国税滞納処分の例による) 国税と同じ手続による
取引先・金融機関などへの支払いの遅れ 判決などを得た債権者(裁判所の手続) 民事執行法22条・143条・145条 差押命令が第三債務者に送達された時

税金と社会保険料の差押えは、裁判所を通さずに行われます。これに対し、民間の債権者が差し押さえるには、確定判決や執行証書などの「債務名義」が必要です(民事執行法22条)。

ファクタリング会社も、民間の債権者として同じ扱いになります。売手が契約上の義務を果たさなかった場合でも、ファクタリング会社が売手の財産を差し押さえるには債務名義が要ります。「支払わなければすぐに差し押さえる」と告げて追加の支払いを求める手口は、違法業者の見分け方で取り上げています。支払いが遅れた場合の対応は、記事「ファクタリングの支払いが遅れたら」(/articles/article-factoring-shiharai-okure/ ・公開予定)で扱う予定です。

税金の滞納から売掛金の差押えまでの流れ

督促状から差押えまで

国税を納期限までに完納しないと、税務署長は督促状で納付を督促します。督促状は、原則として納期限から50日以内に発せられます(国税通則法37条1項・2項)。

督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は滞納者の財産を「差し押えなければならない」と定められています(国税徴収法47条1項1号。国税通則法40条も同じ期限で滞納処分を定めています)。

国税庁は、滞納処分の流れを「督促状送付→財産調査→財産差押え→取立て・公売→滞納国税に充当」と示しています。また、完納するまでは、納税証明書(その3)による「未納の税額がないことの証明」を受けられないとしています。

売掛金の差押えは売掛先への通知で効力が生じる

売掛金のような債権の差押えは、第三債務者(売掛金なら売掛先)に債権差押通知書を送達して行い、効力は送達された時に生じます(国税徴収法62条1項・3項)。差押えをすると、徴収職員は売掛先に対して売手への支払いを禁じ、売手に対しては債権の取立てその他の処分を禁じます(同条2項)。そのうえで、徴収職員は差し押さえた債権を自ら取り立てることができ、取り立てた金銭の限度で滞納国税を徴収したものとみなされます(同法67条1項・3項)。

つまり、売掛金が差し押さえられると、売掛先からの支払いは税務署に向かい、売手には入金されません。売掛先に差押えの事実が知られることにもなります。

厚生年金保険料などの滞納も、督促状で指定された期限までに納付しなければ「国税滞納処分の例によつて」処分されます(厚生年金保険法86条5項)。売掛金の差押えの仕組みは国税と同じと考えてください。

民間の債権者による差押え(債権執行)

取引先や金融機関などの債権者が売掛金を差し押さえる場合は、執行裁判所の差押命令によって手続が始まります(民事執行法143条)。差押命令は、売手に債権の取立てその他の処分を禁止し、売掛先に売手への弁済を禁止するもので、売手と売掛先を審尋しないで発せられます(同法145条1項・2項)。差押えの効力は、差押命令が売掛先に送達された時に生じます(同条5項)。

差し押さえた債権者は、売手に差押命令が送達された日から1週間を経過すると、売掛先から直接取り立てることができます(同法155条1項)。判決が出る前に財産を押さえる「仮差押え」もあり、債権の仮差押えは、売掛先に売手への弁済を禁止する命令で執行されます(民事保全法20条1項・50条1項)。

売った売掛金は差し押さえられるか:対抗要件の先後で決まる

民法467条の対抗要件

ファクタリングで売掛金を売ると、売掛金はファクタリング会社に移ります。ただし、その譲渡を第三者に主張するには対抗要件が必要です。債権の譲渡は、売手が売掛先に通知するか、売掛先が承諾しなければ、売掛先その他の第三者に対抗できません(民法467条1項)。さらに、売掛先以外の第三者(差押えをした税務署や債権者を含みます)に対抗するには、通知または承諾を「確定日付のある証書」で行う必要があります(同条2項)。

法人が売手の場合は、債権譲渡登記をすると、売掛先以外の第三者に対しては確定日付のある証書による通知があったものとみなされ、登記の日付が確定日付になります(動産・債権譲渡特例法4条1項)。登記の費用や手続はファクタリングの債権譲渡登記をご覧ください。

差押えとの優劣を示した最高裁判決と国税庁の通達

国税徴収法にもとづく債権差押えをした者と、同じ債権の譲受人との優劣は、債権差押えの通知が第三債務者(売掛先)に送達された日時と、確定日付のある債権譲渡の通知が到達した日時(または確定日付のある承諾の日時)との先後で決まります。この到達の先後の基準は、民事執行の差押命令を得た債権者と譲受人との優劣について最高裁昭和58年10月4日第三小法廷判決(昭和56年(オ)第1230号、裁判集民事140号1頁)が示したもので、次の平成5年判決が、国税徴収法にもとづく差押えにもこの基準によるとしています。

最高裁第三小法廷 平成5年3月30日判決(昭和63年(オ)第1526号、民集47巻4号3334頁)は、その先後が分からない場合について判断しました。先後が分からない場合は同時に到達した場合と同様に扱い、売掛先が供託したときは、差押債権者と譲受人が債権額に応じて供託金を按分した額の還付請求権をそれぞれ取得するとしています。この判決の事案では、62万円の運送代金について、税務署と譲受人がそれぞれ31万円ずつの還付請求権を取得しています。

国税庁の国税徴収法基本通達(第62条関係33)も、両判決などを参照して同じ扱いを定めています。通達は、優劣は「確定日付のある譲渡通知書が第三債務者に到達した日時又は確定日付のある第三債務者の承諾の日時と、債権差押通知書が第三債務者に到達した日時との先後により判定する」としています。先後が分からず売掛先が供託した場合に、債権額に応じて供託金を按分する扱いも、平成5年判決と同じです。

取引の形ごとの優劣

上記の条文・判決・通達から、取引の形ごとに次のように整理できます。

取引の形 差押えより先に備えていた対抗要件 差押えをした側との関係
3社間(売掛先に通知・承諾を得る) 確定日付のある通知または承諾 ファクタリング会社が優先する
3社間 通知・承諾はあるが確定日付がない 売掛先以外の第三者に対抗できない(民法467条2項)
2社間・債権譲渡登記あり(法人) 登記 登記が差押通知の送達より前なら、ファクタリング会社が優先する
2社間・通知も登記もなし なし 差押えをした側に対抗できない
到達の先後が分からない場合 ― 互いに優先を主張できない。売掛先が供託した場合は、供託金を債権額に応じて按分

2社間で通知も登記もしていない売掛金に差押えが入ると、ファクタリング会社はその売掛金を差押えをした側に主張できません。国税庁の国税徴収法基本通達(第62条関係)も、確定日付のある通知・承諾の要件を欠いて譲渡された債権は「譲渡人の債権として差し押さえることができる」としています。売手にとっては、売ったはずの売掛金の代金が税務署などに支払われ、ファクタリング会社には約束どおりに引き渡せない状態になります。この場合に売手がどのような責任を負うかは契約書の定めによるため、契約前に契約書のチェックポイントで確認してください。同じ売掛金を複数の会社に売った場合の優劣も同じ対抗要件の考え方で決まります(二重譲渡)。

譲渡担保と判断される場合:国税徴収法24条

ファクタリングが売掛金の売買(真正な譲渡)であれば、対抗要件を差押えより先に備えた売掛金は、もはや売手の財産ではありません。ただし、契約の実態が「借入れの担保のための譲渡」であれば、国税徴収法24条の「譲渡担保財産」に当たる可能性があります。

同条は、納税者が国税を滞納し、納税者が譲渡した財産でその譲渡によって担保の目的となっているものがある場合に、納税者の財産に滞納処分をしても徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収できると定めています(同条1項)。税務署長は、譲渡担保権者に書面で告知し、告知書を発した日から10日を経過した日までに完納されなければ、譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、譲渡担保財産に滞納処分を執行できます(同条2項・3項)。ただし、国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている事実を、譲渡担保権者が売却決定の前日までに証明した場合などは適用されません(同条8項)。

国税庁の国税徴収法基本通達(第24条関係)は、譲渡担保財産を「自己又は第三者の債務の担保の目的となっている財産」と説明し、買戻特約付売買の形式をとる譲渡担保契約も例に挙げています。契約の名称が「ファクタリング」であっても、担保の目的かどうかは契約の内容で判断されます。当サイトでは個々の契約が譲渡担保に当たるかどうかを判断できないため、償還請求権や買戻しの定めがある契約は、契約前に税理士・弁護士にご相談ください。

入金口座が差し押さえられる場合

売掛金そのものではなく、入金先の預金口座が差し押さえられることもあります。預金は金融機関に対する払戻しの請求権(債権)であり、銀行を第三債務者とする債権差押えの対象になります(国税徴収法62条、民事執行法143条)。国税徴収法基本通達(第62条関係)も、預金の差押えについて留意事項を定めています。

2社間ファクタリングでは、売手が売掛先から代金を受け取り、ファクタリング会社に引き渡します(インボイスPay・JTCなどの公式表示。2026年10月31日確認)。売掛先からの入金が差押えを受けた口座に入ると、その代金をファクタリング会社に引き渡せなくなるおそれがあります。滞納がある場合は、差押えを受ける前に、後述の猶予制度や分納の相談を進めておくことが大切です。

差押えを受けた売掛金はファクタリングに使えるか

差押えを受けると、売手はその売掛金の取立てその他の処分を禁じられます(国税徴収法62条2項、民事執行法145条1項)。国税徴収法基本通達(第62条関係)は、差押えを受けた後に売手が売掛金を譲渡しても、売掛先は差押債権者に弁済しなければならないとしています。差押えを受けた売掛金をファクタリングで売ることはできないと考えてください。

差押えの対象になっていない別の売掛金を売ることまでは、条文上は禁じられていません。ただし、申込みを受けるかどうかは各社の審査で決まります。後述のとおり、税金や社会保険料の未納がある場合の扱いは会社によって異なります。申込みの際は、滞納や差押えの状況を事実どおりに伝えてください。

差押えを避けるために売手ができること

納付または税務署への相談

督促状を発した日から10日を経過した日までに完納すれば、国税徴収法47条1項1号の差押えの要件には当たりません。一時に納付できない場合について、国税庁は「お早めに所轄の税務署の徴収担当にご相談ください」と案内しています。

換価の猶予と納税の猶予(国税)

国税庁の案内では、国税の猶予制度には換価の猶予(国税徴収法151条・151条の2)と納税の猶予(国税通則法46条)があります。

制度 主な要件(国税庁の案内) 猶予期間 延滞税 差押え
換価の猶予(申請) 一時の納付で事業の継続または生活の維持が困難になるおそれ、誠実な納付の意思、ほかに滞納がない、納期限から6か月以内の申請、原則として担保の提供 原則1年以内(延長を含め2年まで) 猶予期間中は軽減 差押えや換価(売却)が猶予される
納税の猶予(災害など) 災害・病気・事業の廃止や休止・事業の著しい損失などにより、一時に納付できない 原則1年以内 免除または軽減 差押えや換価(売却)が猶予される

すでに滞納がある場合や、滞納から6か月を超えた場合でも、税務署長の職権による換価の猶予(国税徴収法151条)を受けられる場合があると国税庁は案内しています。猶予を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付します。担保は、猶予を受ける金額が100万円以下の場合、猶予期間が3か月以内の場合、提供できる財産がない場合は不要です。

すでに差押えを受けている場合の扱いも条文に定めがあります。納税の猶予をした場合、猶予期間内は新たな督促や滞納処分ができず、すでに差し押さえた財産は、猶予を受けた者の申請にもとづいて差押えを解除できます(国税通則法48条1項・2項)。換価の猶予では、差押えによって事業の継続などを困難にするおそれがある財産について、必要があると認めるときは差押えを猶予し、または解除できます(国税徴収法152条2項)。解除するかどうかは税務署長の判断です。

厚生年金保険料などの猶予

日本年金機構も、事業主の申請による換価の猶予と納付の猶予を設けています。換価の猶予は、一時の納付で事業の継続などを困難にするおそれがあり、誠実な納付の意思がある場合に、猶予を受けようとする保険料等の納期限から6カ月以内に申請します。認められると保険料等を分割して納付でき、同機構は「猶予期間における延滞金の一部が免除されます」としています。同機構は、管轄の年金事務所への早めの相談を案内しています。

税金・社会保険料の未納に触れている会社の公式記載

選定の基準:当サイト掲載36社について、編集部の確認欄のうち公式の出典がある事実の欄を「滞納」「未納」「税金」「納税」「社会保険」で検索し、税金・社会保険料の未納・滞納に触れている記載がある会社をすべて載せています(当サイトの確認ポイントの文は使っていません)。該当は3社(GMO BtoB早払い・RFD株式会社・買速)で、ほかの33社には未納・滞納に触れた記載がありません。並びは記載の種類ごとで、順位を示すものではありません。

会社 公式の記載(要旨) 確認日
GMO BtoB早払い 赤字・債務超過だけでは断らないが、税金や社会保険料の未納があり分納手続きをしていない場合は買取不可。法人のみが対象 公式サイト・2026年10月31日確認
RFD株式会社 赤字・租税公課の未納や滞納があっても利用可 公式サイト・2026年10月31日確認
買速 赤字決算・税金滞納中・リスケ中でも利用可とする記載 公式サイト・2026年10月31日確認

このほか、ベストファクターは契約時の書類に納税証明書を挙げています(公式サイト・2026年10月31日確認)。未納・滞納の扱いには触れていないため、上の表には入れていません。

GMO BtoB早払いの記載は「分納手続き」とだけあり、どの制度による分納を指すかは書かれていません。RFD株式会社と買速は滞納があっても利用できると記載していますが、差し押さえられた売掛金そのものを買い取るとは書いていません。いずれの会社も、差押えを受けている場合の扱いは公式に記載がありません。ご利用前に、公式サイトにて最新情報をご確認ください。

よくある質問

Q: ファクタリングで売った売掛金に、税務署の差押えが入ることはありますか? A: 譲渡の対抗要件(確定日付のある通知・承諾、または債権譲渡登記)を差押えより先に備えていない場合は、ファクタリング会社は差押えをした税務署に優先を主張できません(民法467条2項)。優劣は、債権差押通知書が売掛先に送達された日時と、確定日付のある通知の到達日時などの先後で決まります。

Q: 2社間ファクタリングで入金口座が差し押さえられたら、どうなりますか? A: 預金も差押えの対象です。売掛先からの代金が差押えを受けた口座に入ると、ファクタリング会社に引き渡せなくなるおそれがあります。契約上の責任は契約書の定めによるため、契約書を確認し、ファクタリング会社と税務署(または債権者)に早めに相談してください。

Q: ファクタリング会社に差し押さえられることはありますか? A: ファクタリング会社が売手の財産を差し押さえるには、確定判決や執行証書などの債務名義が必要です(民事執行法22条)。判決前の仮差押えは、裁判所の仮差押命令によって行われます(民事保全法20条・50条)。債務名義も裁判所の命令もないまま「すぐに差し押さえる」と告げて支払いを求められた場合は、違法業者の手口の可能性があります。

Q: 差押えを避けるために、税務署にはいつ相談すればよいですか? A: 申請による換価の猶予は、納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請する必要があります。期限を過ぎた場合も職権による換価の猶予を受けられる場合があります。国税庁は、納期限までに納付できない場合は早めに所轄の税務署の徴収担当に相談するよう案内しています。

まとめ

  • ファクタリングの売手に関係する差押えは、税金の滞納、社会保険料の滞納、民間の債権者による債権執行の3つです。民間の債権者(ファクタリング会社を含む)が差し押さえるには債務名義が必要です
  • 国税は、督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないと差押えの対象になり、売掛金の差押えは売掛先への債権差押通知書の送達で効力が生じます
  • 売った売掛金と差押えの優劣は、確定日付のある通知・承諾または債権譲渡登記と、差押えの送達との先後で決まります。2社間で通知も登記もない売掛金は、差押えをした側に対抗できません
  • 契約の実態が担保目的の譲渡であれば、国税徴収法24条の譲渡担保財産として徴収の対象になる可能性があります
  • 一時に納付できない場合は、換価の猶予(延滞税は軽減)や納税の猶予、厚生年金保険料等の猶予を、税務署・年金事務所に相談してください

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