ファクタリングでやってはいけないこと|架空債権・請求書の偽造・入金の使い込み
ファクタリングでやってはいけないことは、実在しない売掛金(架空債権)で申し込むこと、請求書や発注書を偽造・改ざんすること、2社間契約で売掛先から受け取った代金をファクタリング会社へ送らずに使うこと、同じ売掛金を複数の会社に売ること、申込時に事実と異なる申告をすることの5つです。いずれも契約違反として代金の返還や違約金を求められる原因になり、行為によっては刑法の詐欺罪や私文書偽造等の罪に問われるおそれがあります。
本記事では、e-Gov法令検索で確認した刑法・民法の条文と、当サイトが各社の公式サイト・利用規約で確認した「違反があった場合の扱い」を分けてご説明します。罪が成立するかどうかは個別の事実関係で判断されるため、当サイトでは成否を判断していません。悪質な業者の見分け方はファクタリング詐欺の手口と見分け方、契約書の確認項目はファクタリング契約書の注意点でご案内しています。
やってはいけない5つの行為と関係する条文
次の表は、ファクタリングの利用者が避けるべき行為と、関係し得る法律の条文、詳しく扱っている記事をまとめたものです。
| 行為 | 関係し得る刑法の条文 | 契約上の扱い(各社の規約の例) | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 実在しない売掛金で申し込む(架空債権) | 詐欺(246条) | 表明保証違反として解除・返還・違約金 | 本記事 |
| 請求書・発注書などを偽造・改ざんする | 私文書偽造等(159条)、偽造私文書等行使(161条)、電磁的記録不正作出及び供用(161条の2) | 偽造等が見られる場合の措置(PMG) | 本記事 |
| 2社間で受け取った代金を送らずに使う | 横領(252条)、業務上横領(253条)、背任(247条) | 遅延損害金、売掛先への連絡・通知 | 支払いが遅れたら |
| 同じ売掛金を複数の会社に売る(二重譲渡) | 詐欺(246条)など | 売掛先への通知・債権譲渡登記 | 二重譲渡 |
| 申込時に事実と異なる申告をする | 内容によって詐欺(246条)など | 表明保証違反として解除・返還・違約金 | 本記事 |
表の「関係し得る」は、条文の構成要件に当たる可能性があるという意味です。実際にどの罪に当たるか、そもそも罪が成立するかは、捜査機関と裁判所が個別の事実をもとに判断します。
架空債権で申し込む:詐欺罪(刑法246条)
架空債権とは、実際には取引がない、または取引はあっても請求できる金額が確定していない売掛金を、確定した売掛金であるかのように示すことです。たとえば、まだ発注を受けていない仕事の請求書を作って申し込む、取引先に請求していない金額を請求済みとして申告する、といった行為がこれにあたります。
刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」、2項は「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」と定めています。ファクタリング会社をだまして買取代金を振り込ませる行為は、この条文に当たる可能性があります。また、刑法250条は「この章の罪の未遂は、罰する」と定めており、審査の段階で発覚して代金が振り込まれなかった場合でも、未遂として扱われる可能性があります。
架空債権と区別が必要なのが、検収前・納品前の請求書や注文書の段階の取引です。これらは、取引自体は実在していても、売掛金として確定していない状態です。注文書の段階で資金化するサービスを公式に案内している会社もありますが、扱いは会社ごとに異なります。検収前の請求書の扱いは検収前の請求書はファクタリングできるかでご説明しています。確定していない取引で申し込むときは、確定していないことをそのまま申告してください。
請求書・発注書の偽造と改ざん:刑法159条・161条・161条の2
他人の名義の書類を作る・書き換える
刑法159条は「私文書偽造等」を定めています。2026年11月1日にe-Govで確認した現行の条文では、行使の目的で、他人の印章や署名を使って「権利、義務若しくは事実証明に関する文書等」を偽造した者を「三月以上五年以下の拘禁刑」としています(1項1号)。同じ項の2号は、電子的な印影など(電磁的記録印章等)を使って電磁的記録文書等を偽造する行為も対象にしています。
2項は、他人が押印・署名した文書等を「変造」した者を1項と同じ刑とし、3項は、それ以外の偽造・変造を「一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金」としています。偽造した文書を使った場合は、161条1項が「その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処する」と定め、2項で未遂も罰するとしています。
ファクタリングの申込みで関係し得るのは、たとえば次のような行為です。
- 売掛先の名義の発注書・検収書・契約書を、売掛先に無断で作る
- 売掛先が押印・署名した書類の金額や日付を書き換える
- 通帳の写しや入出金明細の画像を加工して、入金の実績を実際と違うものにする
電子データの請求書・明細の扱い
請求書や入出金明細をPDFや画像で提出する場合も、扱いは変わりません。刑法161条の2第1項は「人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定め、3項は不正に作られた電磁的記録を同じ目的で人の事務処理に使った者も同じ刑としています。紙の書類でなければ問題にならない、ということはありません。
自社の名義の請求書で金額を水増しする
自社が発行する請求書の金額を、実際の取引額より多く書いて申し込む行為は、他人の名義の書類を作る行為とは条文上の扱いが異なり得ます。ただし、水増しした金額で買取代金を受け取れば、架空債権と同じく詐欺罪(246条)に当たる可能性があり、契約上も後述の表明保証違反になります。請求書の正しい記載項目はファクタリング審査で確認される請求書の書き方でご確認ください。
2社間で受け取った代金を使い込む
2社間ファクタリングでは、売掛先は契約前と同じく利用者の口座に代金を支払い、利用者がその代金をファクタリング会社へ送金します。たとえばインボイスファクターは2社間で集金代行業務委託契約を同時に結ぶ流れを(公式サイト・2026年10月14日確認)、JTCは事務委託契約を結び、利用者が集金してJTCへ支払う流れを(公式サイト・2026年10月31日確認)公式に説明しています。
この代金は、売掛金を売った時点でファクタリング会社に渡すべきお金です。自社の別の支払いに回すと、契約上の遅延損害金の対象になるほか、刑法の横領(252条)・業務上横領(253条)・背任(247条)に当たる可能性があります。送金が遅れたときの各社の定めと相談の手順は、ファクタリングの支払いが遅れたらで詳しくご説明しています。代金を送る前に破産した場合の扱いは、ファクタリング利用中に自己破産・倒産したらで取り上げています。本記事では要点だけを挙げます。
- 利用規約で、回収金の送金が遅れた場合の遅延損害金を年14.6%と定めている会社があります(バイオン・マネーフォワード 早期入金。公式・利用規約・2026年10月31日確認)
- 送金が間に合わないと分かった時点で、期日の前にファクタリング会社へ連絡することが、選べる手段を残すことにつながります
同じ売掛金を複数の会社に売る(二重譲渡)
すでにファクタリング会社に売った売掛金を、別の会社にも売る行為は二重譲渡と呼ばれます。先の会社への売却を隠して後の会社から代金を受け取れば、後の会社をだましたことになり、詐欺罪などに当たる可能性があります。売掛金を受け取る権利がどちらの会社にあるかは、民法467条の通知・承諾や債権譲渡登記の順序で決まります。罪名ごとの説明と優先順位のルールはファクタリングの二重譲渡、他社を利用中に別の売掛金で申し込む場合の扱いは他社利用中でもファクタリングできるかでご説明しています。
申込時の申告を偽る:利用規約の「表明保証」
ファクタリングの利用規約や契約書には、利用者が「売掛金が実在すること」「ほかに譲渡していないこと」などを事実であると約束する条項が置かれることがあります。この約束を「表明保証」と呼びます。申込時の申告が事実と違えば、刑事責任の有無とは別に、この条項の違反として契約上の責任を負うことになります。
当サイトの会社データ(各社の公式サイト・利用規約で確認した事実)から、利用者の表明保証違反・偽造・契約違反・二重譲渡などがあった場合の扱いを記載している会社を抜き出すと、次の6社です。抜き出しの基準は、確認データの事実欄に、これらの違反を条件とした扱いの記載があることです。
| 会社 | 違反があった場合の扱い(公式・利用規約) | 確認日 |
|---|---|---|
| マネーフォワード 早期入金 | 表明保証違反・取引の取消等の場合は、譲渡合意の解除・譲渡対価の返還請求と違約金(利用規約第13条) | 2026年10月31日 |
| みんなのファクタリング | 表明保証違反等で解除となった場合は、買取代金の返還と、額面との差額の違約金 | 2026年10月31日 |
| FREENANCE | 表明保証違反・取引先からの直接受領等の場合は、額面相当額の支払義務 | 2026年10月31日 |
| バイオン | 債務不履行・二重譲渡などの場合に、売掛先への債権譲渡通知・登記を行い得る。利用者の責めに帰すべき事由がある場合は、償還を求めない定めの対象外 | 2026年10月31日 |
| JTC | 契約違反等が発覚した場合は、取引先に連絡する場合がある | 2026年10月31日 |
| PMG | 請求書・注文書の偽造等が見られる場合は措置がある(公式よくある質問) | 2026年10月31日 |
この6社はいずれも、売掛先の倒産などで回収できなかった場合に利用者へ買戻しや返還を求めない旨(償還請求権のない契約)も記載しています(PMG・JTCは2026年10月31日確認の公式の記載)。償還請求権がない契約でも、利用者の違反があれば返還や違約金の対象になる、という関係です。償還請求権の考え方はノンリコースとリコースの違いでご説明しています。
また、バイオンは利用者が法人の場合に代表者が連帯保証人として個人の立場で保証すること(利用規約第8条11項)を、みんなのファクタリングは法人の場合に代表者の保証書の差入れを買取実行の条件とすること(利用規約第10条)を定めています(いずれも2026年10月31日確認)。法人の違反であっても、代表者個人が支払いを求められる可能性がある定めです。
違約金の計算例(仮定)
例として、額面100万円の売掛金を、買取代金90万円でみんなのファクタリングと同じ型の定め(買取代金の返還と、額面との差額の違約金)の会社に売り、後に表明保証違反で解除された場合を考えます(金額は説明のための仮定です)。
- 買取代金の返還:90万円
- 額面との差額の違約金:100万円 − 90万円 = 10万円
- 合計:100万円
受け取った90万円を返すだけでは済まず、額面の全額に相当する金額の支払いを求められる計算になります。実際の金額や条件は各社の契約書で決まるため、契約前に違反時の条項を確認してください。なお、民法420条3項は「違約金は、賠償額の予定と推定する」と定めています。
資金繰りが厳しいときに、代わりに取れる行動
支払いに間に合わない場合でも、次のように違反を避けながら対応する方法があります。
- 確定している売掛金だけで申し込む:金額が足りない場合でも、確定している分だけで申し込み、不足分は別の手段を検討してください
- 送金が間に合わないときは、期日の前に連絡する:連絡の内容と相談先は支払いが遅れたらにまとめています
- 他社の利用状況や取引の事情は、申込時にそのまま伝える:伝えたうえで利用できるかは各社の審査で決まります
- ファクタリング以外の資金繰りの手段も並べて検討する:資金ショート寸前の会社がやるべきことで、資金化の選択肢を整理しています
- 違法な業者からの勧誘に応じない:給与を対象にしたものなど、ファクタリングをうたう貸付には偽装給与ファクタリングの実態のような例があります
すでに違反にあたる行為をしてしまった場合は、早い段階で弁護士に相談してください。トラブルの相談窓口はファクタリング契約後のトラブル事例と対処法でご案内しています。
よくある質問
Q: 請求書の金額を少し多く書いて申し込むと、どうなりますか? A: 水増しした金額で買取代金を受け取れば、刑法246条の詐欺罪に当たる可能性があります。審査の段階で発覚した場合も、刑法250条が詐欺の未遂を罰すると定めています。契約上は表明保証違反にあたり、利用規約で解除・代金の返還・違約金を定めている会社があります(マネーフォワード 早期入金・みんなのファクタリングなど)。
Q: 2社間ファクタリングで、売掛先から入ったお金を一時的に別の支払いに使ってもよいですか? A: 売掛先から入った代金は、ファクタリング会社へ送るべきお金です。別の支払いに使うと、契約上の遅延損害金の対象になり(年14.6%と定める会社があります)、刑法の横領・業務上横領・背任に当たる可能性があります。送金が間に合わない場合は、期日の前にファクタリング会社へ連絡してください。
Q: 償還請求権のない契約なら、違反があっても返金しなくてよいのですか? A: いいえ。償還請求権がないことは、売掛先の倒産などで回収できなかった場合に利用者へ返還を求めないという意味です。当サイトの確認データでは、償還請求権のない契約を記載している会社でも、表明保証違反などがあれば買取代金の返還や違約金を求める定めを置いています(マネーフォワード 早期入金・みんなのファクタリング・FREENANCE・バイオン)。
Q: PDFの請求書や明細の画像を加工した場合も、罪になりますか? A: 刑法159条は電磁的記録文書等の偽造も対象とし、161条の2は事実証明に関する電磁的記録を不正に作ることを罰すると定めています。紙の書類と同じく、罪に当たる可能性があります。どの条文に当たるかは、誰の名義のデータを、どのように作ったかなど個別の事実で判断されます。
まとめ
- ファクタリングでやってはいけないのは、架空債権での申込み、請求書などの偽造・改ざん、2社間での代金の使い込み、二重譲渡、申込時の虚偽の申告の5つです
- 架空債権や水増しは詐欺(刑法246条・未遂は250条)、書類の偽造・改ざんは私文書偽造等(159条)・行使(161条)・電磁的記録不正作出(161条の2)に当たる可能性があります
- 当サイトの確認データでは6社が、利用者の違反があった場合の解除・返還・違約金・売掛先への連絡などを利用規約や公式よくある質問に記載しています
- 償還請求権のない契約でも、利用者の違反は返還や違約金の対象になります。法人の代表者が保証する定めを置く会社もあります
- 資金が足りない場合は、確定している売掛金だけで申し込み、送金が遅れそうなときは期日の前に連絡してください。すでに違反にあたる行為をした場合は、早い段階で弁護士に相談してください
